NOTE

メッセージとちょっとした読み物

これからWEBデザイン科を目指そうとしている方、未来のWEBデザイン科の後輩のみなさんへ伝えたいことを書きました。ちょっとした日記つき。

WEBデザイン科に行きたい方へ

空の画像

・オリジナルのHPを作れるようになりたい。
・コーディングを学びたい。
・Illustrator、Photoshopを使って素材や印刷物を制作できるようになりたい。
・未経験だけど、WEB業界、広告業界への転職を考えている。
・これからフリーランスで働きたい。

という方は、ぜひともWEBデザイン科に応募していただきたいです。
未経験・初心者でも臆せずに声を上げれば、先生方もしっかりとサポートしてくださいます。

この6か月は勉強と制作、就職活動と、とにかくやることが盛りだくさん。時間と自分との闘いです。(遠方から通学される方はここに「眠気」がプラスされます!)
私が伝えたいのは全く楽な環境ではないよ、ということです。「ただの訓練校じゃん」と軽い気持ちで入校するとちょっと痛い目を見るかもしれません。

私はざっくりと「デザイン」に興味があり入校を決めました。PCは仕事でWordを使用するくらいの知識しかありませんでした。もちろん、コーディングの「コ」の字も知らない状態です。完全な「初心者」でした。
勉強についていけなかった時期もありましたが、自分の勉強方法の癖を知ることができましたし、内面的な課題とも向き合えるいい機会だったように思います。
コーディングはやればやるほど楽しくなってきて、クラスの仲間たちや先生方のおかげでなんとかこのホームページを作れるようになりました。

ここに集まる仲間たちは先生方は「本気」の人たちばかりです。仲間と切磋琢磨しながら過ごす日々はとても充実していました。何よりも「何かに本気で打ち込んでみる」という経験ができたのが私にとって大きな財産となりました。

自分の夢を叶えたい、という方には条件が整っている場所です。とにかく中身の濃い6か月が待っています。ぜひ一歩、踏み出してみてください!

WEBデザイン科の後輩の方へ

モミジの画像

恐らくこのページを見ている方は「先輩たちはこういうHPを作ったんだよ~」と聞いてここへたどり着いたか、卒業制作間際になって駆け込んで来た方がほとんどではないかと思います。

私も先輩方のHPを見て「私もこんな風に作れるのかな」と期待半分、不安半分の気持ちでいました。あと数日で卒業する身ですが、みなさんにお伝えしたいことをここに記しておきます。

やっておいてよかったこと

●とにかくインプット!

切羽詰まったとき「結局センスがあるかなしかじゃん(キレ気味)」となってしまわないように・・・。今までセンスとは感覚的なものだと思っていましたが、結局のところ「知識」だなあ、という結論に至りました。 では、センスってどうやって磨けばいいのだろう・・・、と考えたとき、インプットが一番だと感じました。
インプットには「直感力を磨くためのインプット」と「知識を身につけるためのインプット」の2種類があると思います。

【直感力を磨くためのインプット】

・ピンタレストやInstagramでプロのデザイナーをフォロー。気に入ったものをとにかく保存する。
・「いいな」と思ったフリーペーパーやチラシを集める。
・外に出る。美術館で展示を見る。入ったことのないお店に入る。などなど・・・

さきほどセンスは知識だと書きましたが・・・。「いいデザインだな」という感覚を磨くことの重要性を日々感じています。
普段何気なく見ているサイトやお気に入りのお菓子のパッケージなどを眺めてみたり、どんな目的があってこのデザインなのかを考えたり、というのもいいと思います。

【知識を身につけるためのインプット】

・テキストやデザインの本を読む。
・YouTubeでプロのデザイナーのテクニックを学ぶ。などなど・・・

デザインは自己表現のアートとは異なり、かならず目的ありきのものなので、自分の感覚のみを頼りに作るわけにはいきません。(自己満足で作るものではないのだな、ということを実感する日々でした。)
図書館にはたくさんのデザインに関する本があるので、色やフォントがもつイメージ、レイアウトなどを勉強することをおすすめします。どうしてその色を選んだのか、写真を選んだのか、なぜその配置なのか・・・。ひとつひとつを説明できるように意図することが大切だと思いました。

やっておいたほうがよかったこと

●とにかくアウトプット

とにかくたくさん作りましょう!!質より量。これに尽きると思います。私自身、もっともっと作ればよかった、と反省しています。

ひとつの作品を完璧に仕上げるよりも、今持っている7~8割ほどの力でたくさん作り、その都度フィードバックをもらった方が確実に上達していきます。「まだ下手くそだし、見せる段階じゃないなあ・・・。」なんて思うことはないです。

私はなかなかできなかったので、後輩の皆さんにはぜひとも「質より量」を実践していただきたいです・・・!

助かる~!あってよかったもの

・目薬:PCとにらめっこなので目が疲れます。疲れていなくても、うるおいプラスで瞳を守ろう!

・ホットアイマスク:休憩中にたまに使っていました。気分転換にも◎

・肩こり、腰痛対策グッズ:今まで肩こり知らずだった私が、もれなくどちらも経験することになりました・・・。適度に身体は動かしてね。

・ブランケット:寒がりな人は必須!

・化粧水(特に冬期に受講の方):ミストタイプがおすすめ!けっこう教室って乾燥します。お肌の水分が奪われるので気になる方はぜひ!

・おやつ:ハイカカオのチョコレートに幾度となく助けられました・・・。

ほかにも、サッカーボールやシャボン玉など、各々でリフレッシュグッズ(?)を持参していました。なかなかハードな6か月なので、ご自身が心地よく過ごせるように工夫してみてください◎ カプセルの画像

一緒に学んだ「WEB8」のみんなへ

玄関の画像

ほんっっっとうに濃い6か月間でしたね。年齢層もさまざまで、それぞれに色んな背景があって、ここに来なければ出会えなかったと思うとなんだか感慨深いです。

私はもう序盤のあたりで「コーディングは私には無理だ!誰か助けてくれ!頼む~!」と騒いでいた記憶があります。案の定、コーディングの授業に入ってからは隣の席だったK様(愛称)からは「グラフィックの時の方がイキイキしてた笑」と言われていました笑 いや~さすがK様だよね。
ありがたいことに「わかんない~!助けて~!」と言えば必ず誰かが反応してくれて「どうした!?」と飛んできてくれました。これって当たり前のことじゃないよね・・・。

私が趣味で描いている絵を褒めてくれたり、誕生日の時はケーキや飲み物(大量)を買ってきてくれたり、時には悩みを親身になって聴いてくれたり、作品に真剣にアドバイスをくれたり、ふざけた冗談にのってくれたり・・・。本当にみんなの優しさに支えられていました。

早い段階でアサーションを学んだのもあって、コミュニケーションも取りやすかったし、毎日が楽しくてここを出ていくのが本当に名残惜しいです。きっと、ありのままの私でいいんだなと思えたからとても居心地がよかったのでしょう。 私は今まで自分の思考や感情を自分の中だけで完結させてしまうことが多かったのですが、ここで少しずつ出していく(発信していく)練習をしようと己に課していました。みんなとの出会いのお陰で、少しは自分のことを大切に、自分ファーストで生きられるようになったんじゃないかなと思います。

あーでもないこーでもないと考えながら作品を作って見せ合って・・・。誰かに作品を見せるというのは最初は尋常ではないぐらい恥ずかしかったけれど、慣れって恐ろしいですね。後半はだんだん「見てもらいたい!」という欲の方が強くなっていきました笑
同じ課題でもそれぞれのデザインには、一人ひとりの考えや価値観が込められていて個性が感じられて面白かったです。みんなでもっと良くしていこう!という気概と思いやりに溢れた、感想、アドバイスの共有の時間が大好きでした。

訓練校の外に出たら、この日常は非日常になる・・・。それが現実なのだろうと理解していても、この教室のように自分の考えや価値観、守りたいものを大切に、相手のことも尊重しながらコミュニケーションができればいいな、と願う自分がいます。
本当に得難い経験をしたなあ。ここでの経験の一つひとつが私の揺るぎない自信となりました。本当にありがとう。みんなのこれからが、わくわくときらきらで溢れる未来になりますように。落ち着いたら飲もうね。いや、落ち着かなくても飲もうね。

講師の先生方へ。
先生!と呼ばれるのがお好きでいらっしゃらない方々ばかりですが・・・ここでは先生と呼ばせてください笑
本当にたくさん学ばせていただきありがとうございました。いただいた言葉のひとつひとつが私の宝物です。熱意を持って働くとはこういうことだなあと先生方を見ていて感じましたし、私もこんな風になりたい!と強く感じていました。憧れのままで終わらないようにしますね!笑

2023.11.21 Poppo喫茶店

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「みんな、お昼だよ~。」

誰かの声で教室の空気がふわあとゆるむ。ああ、もうそんな時間かあ。

にらめっこしていたPCから目を離し、座った姿勢のまま伸びをする。うわあ、身体かちこち。しばらくずっと同じ姿勢のままだったようだ。それぐらい集中していたってことか。

陽の光は穏やかで、午後のものに変わろうとしていたが、私の心は荒みきっていた。遅々として進まない課題。あれだけ時間をかけたのに、こんなものか。
もやもやしながら持参したお弁当を広げる。彩りなんて気にしてる暇はなくて、ただひたすらに味が濃くて茶色いお弁当だ。

誰かが売店で買ったカップヌードルのジャンキーな香りがする。ああ、私も明日はカップヌードルにしよう。人が食べていると自分も食べたくなるし、こんな風に疲れているときはなおさら、身体が「からだにわるいもの」を求めだす。

そうだ、そうしよう。とひとり頷きながらお弁当をつついていたときだった。

「なんか、誰かがコーヒー淹れるらしいけど、飲むか?」

びっくりして顔を上げると、私の前の席のMさんが何かを企んでいるような微笑みを浮かべながら立っていた。

「飲む!」

自分でも驚くぐらい即答だった。Mさんが動き出すということは・・・。これはもしや、Poppo喫茶店がやってくるのか?

Poppo喫茶店とは、WEB8の教室にのみ現れるとにかく謎が多い喫茶店だ。神出鬼没で機会を逃せば、次はいつやってくるかわからない。店主のP氏は秘密主義で、どこからやってくるのかは絶対に明かしてくれない。Mさんと関わりのある人物であるのは間違いないのだけど・・・。

鼻歌が聞こえる。聞き覚えのあるこの歌は・・・。

「今日は天気がいいから、外だな。」

いつの間にかP氏が教室の中にいた。お湯がたっぷり入った色とりどりの大きな水筒3つと、彼女の仕事道具であるドリッパーを抱え、中庭につながる窓に向かって徐ろに歩き出す。

そのあとに続く、WEB8の仲間たち。待ってましたとばかりに「私も!」と列をなす光景はなんとも異様だ。水筒のお湯がなくなりしだい閉店してしまうから、私も急いで列に並ぶ。
ここの喫茶店の飲み物は何を頼んでも美味しい。一度飲んだら忘れられない味なのだ。中毒性があるため「次の開店はいつなのか!」と発狂するクラスメイトもいるほどだ。

恐ろしいように聞こえるかもしれないが、現に私もこの店のコーヒーの虜になってしまっている。P氏は客の好みを全て把握していて、コーヒーが苦手な生徒には紅茶を淹れてくれる。さらに、カフェインが苦手な生徒にはデカフェまで対応しているという万能ぶり。
ある日、謎の出汁パックを取り出して「ここのお出汁はなあ・・・。めちゃくちゃ美味しいぞお・・・。」と見せびらかしてきたときは、そこに居合わせた生徒のほとんどが文字通り、喉から手を出して倒れた。私たちをバケモノにするとは・・・。P氏はあまりにも危険人物すぎる。

「あ~、やっぱりほっとする・・・。」

私の前に並んだクラスメイトが受け取ったコーヒーを一口飲んで、うっとりした声で呟く。やはりだたのコーヒーではないようだ。ああ、いよいよ私の番が来る。

「君はコーヒーだよね。」

いつものでしょ、と言わんばかりに、P氏は慣れた手つきでコーヒーを紙コップに注ぐ。そうだよ!それを待っていた!この香りだ!ああああああ早く飲みたい!

どうぞ、と手渡された紙コップごしに感じる温もり。堪らなくなって、その場で一口。後ろに並ぶみんな、ごめん!我慢できなかったの!

「は?うま。」

口からバカみたいな感想が出た。そこからの記憶は曖昧だ。P氏はげらげら笑って、「その笑顔があればお代はいらないから~。」と言っていたような気がする・・・。ああ、ずっとこの味を待っていたんだ。もしかしたら私って、これを目当てに訓練校に通っているのではなかろうか・・・。

「お~い。大丈夫か?そろそろ時間だぞっ。」

はっと目を覚ました。Mさんがいつもの微笑みを浮かべて私の顔を覗いている。あれ?Poppo喫茶店は?私はいつの間にか眠ってしまっていたのだろうか。

「あ~、よかった。君、今日とても疲れてたようだけど、大丈夫みたいだね。」

え?とPCの画面を見ると、相も変わらず進んでいない課題が映し出されていた。でもなぜだろう。嫌な気持ちにならなかった。さっきまでのあのもやもやが明らかに軽くなっていた。あ、そうだ、きっとさっき飲んだコーヒーのおかげに違いない。あれは夢なんかじゃなかったんだ。

「そうそう。Poppo喫茶店、さっき来てたんだよ。Mさんも飲んだでしょ?あれのお陰だよ。」

「えー!何それえ!君ってば、面白い夢を見たんだね。」

え?

私は、MさんにPoppo喫茶店が来るって教えてもらったんじゃなかったけ。違ったっけ。もう何が夢で何が現実なのかわからない。私、自分では気づかないくらい実は疲れてる?今、ものすごく調子が良い気がするのは・・・、気のせい?

ちょっと自分、やばいかもなあ、と深呼吸をする。教室の空気は少し淀んでいて、クラスメイトのお昼ごはんの名残が混ざり合い、複雑な匂いがした。換気すればよかったかもしれない。まずはカップヌードルの匂いがして、その次に・・・。

「さーて、午後も頑張るべ!」

Mさんがささっと席に移動する。
ああ。そうだね。午後もじっくりやってこうね。

周りを見渡すと、気のせいかもしれないけれど、午前よりもクラスメイトの顔が晴れ晴れとしていた。どうやら私たちはまだまだ大丈夫みたいだ。

Poppo喫茶店は、WEB8の教室にのみ現れるとにかく謎が多い喫茶店だ。神出鬼没で機会を逃せば、次はいつやってくるかわからない。

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2024.3.22 苺ドーナツの記憶

苺ドーナツの画像

え?今日がパン屋さん最終日ってこと?

やばい。自分のプレゼンテーションが終わり、完全に安心しきっていた。

ここの訓練校は毎週金曜日、パン屋が移動販売でやってくる。菓子パンからお総菜パンまで、とにかく多種多様。クリーム色の番重には「あま」も「しょっぱ」もぎゅうぎゅうに詰まっている。

は~~んこれが宝石箱か~~~。もし自分が億万長者だったら番重ごと買い取り、クラスメイトに車まで運ぶのを手伝ってもらうね。
そんな妄想をしたことがあるのは私だけではないはずだ。

そう。このパンの争奪戦はそれはそれは熾烈な戦いとなる。時間になるとどかどかと階段を駆け下りる音が学校中にこだまする。我らの天敵、グラフィック科の猛者たちだ。

絶対に負けられない戦いがそこにある。なんとしても自分の好みのあの子(パン)を勝ち取らなければならない。メロンパンなんて何種類もあるんだぞ!?推しメロンパンが奪われたらどうすんだ!?

今日は3月22日(金)。私たちの卒業は3月28日(木)。つまり今日がパン屋さんと会える最後の日ってこと!

あははは!よゆーよゆー!パン屋さんが店を広げる図書館までは、我らWEBデザイン科の方が圧倒的に距離が近い!教室を出てたったの5歩!3秒もかかんないもんね。

私をはじめとするWEB8の何人かが、勢いよく教室を飛び出す。「今日が最後だからあああ!」とか「寂しいよう・・・。」とか言いながら、ほぼ競歩の姿勢で目的地へ向かう。どんなに急いでいても廊下は走らない。敵に焦っている姿を見せてはならぬ。そして人に迷惑はかけてはならぬ。これが私たちの美学である。

最後の戦いだ!絶対に目当ての品を勝ち取るぞ!

・・・それなのに。

「げ。」

なんということだろう。図書館にはすでにグラフィック科の面々がパン屋さんをぐるりと取り囲んでいるではないか。ちくしょう、いつの間に!・・・やばい、私の推しメロンパンはどうなっている!?

・・・メロンパンが、ない。

私の大好きな、カスタードクリームがたんまり入ったあのメロンパンが、ない。

衝撃のあまり膝から崩れ落ちる。うそだあ、最終日なのに・・・。ちょっと待って私、あれ食べないで卒業すんの・・・!?悲しみを超えて、ふつふつと湧いてくる怒り。私の推しはどこいったあ!?

「今日が最後だから・・・、奮発しちゃおうかな。」

ぽつり、と呟く声。見るとグラフィック科の猛者たちの表情は敵とは思えないほどに穏やかだった。こんな顔、知らない。皆がそれぞれ財布をぎゅっと握りしめ、番重の中身を愛おしそうに見つめている。

おい!やめろ!これは戦いだぞ!?そんな情けない顔をするな!
・・・あれ、そもそもメロンパンって今日、最初からない感じ?いやいやお前たち、いつもの覇気はどうしたんだ!私たちと戦え!

「このパン屋さんね、パンだけじゃなくてプリンも美味しいんだよ。中にクルトンとりんごが入っているの。」

「へー、そうなんだ。私はベーコンエピが好きなんだよね。」

「わかるー、私もです!あと、フルーツサンドも美味しいしカレーパンも美味しいよ。」

「なるほど、カレーパン・・・。あなたはそう思われるんですね・・・。私はカレーパンはあまり好きではないんですよね。」

何だこれは。もはや敵味方関係なくパン談義に花を咲かせているではないか。なんかお互いすごいしみじみしちゃってるじゃん・・・。アサーティブに話してる人もいるし・・・。ちょっと私も混ぜてほしい。

思えば私はなぜ彼らを敵と認識していたのだろう。科なんて関係なく、私たちはみな等しくこのパン屋さんを愛している。グラフィック科の者たちだって、ただただ毎週金曜日が来るのを楽しみに待ち望んでいた同志ではないか。

・・・なんか、メロンパンとかどうでもよくなってきちゃった。

前の人の会計が終わるのを待ちながら、何を買おうか考える。
うーん。では、そのクルトン入りのプリンとやらを買おうか。あ、せっかくだし今まで気になっていたフランスパンも買っちゃおう。へえ、フレンチトーストにすると美味しいのか。さっそく明日の朝ごはんにしよう。

おや。

なんだか番重の隅っこにひっそりと並ぶドーナツたちが、妙に気になる。その中でも一際目を引いたのが、かわいらしいピンク色をした苺のドーナツだった。カラフルなチョコスプレーが童心をくすぐる。

・・・こういうドーナツ、Illustratorを学び始めたころに授業で描いたよなあ。

講師のまちゃさんが「はい、ドーナツの完成です~。」と言ったとたん、「おぉ~・・・。」と感嘆の声が上がった、あの日。
楕円形ツールと長方形ツールのみを使用して描いた非常にシンプルなドーナツは、私たちの初めての成果物となったのだった。慣れない操作に四苦八苦しながら、何個も何個もひたすらに狂ったようにドーナツを描いた。そうだ。私がはじめて描いたドーナツは、こんな風にピンク色のかわいらしいドーナツだった。

あれからどれくらい経ったのだろう。きっとこのグラフィック科の面々も、あのドーナツからスタートしたのかもしれない。私たちと同様に、おぼつかないマウス操作でぽち・・・、ぽち・・・、とやっていたはずなのだ。

今やお互いに卒業制作に励んでいる。そう考えればやはり私たちは同志なのだ。なんだか自分が恥ずかしくなってきた。

「・・・すみません。これもください。」

苺ドーナツを指さす。「かわいい~」と声が上がる。一応断っておくが、かわいいのは私ではなくドーナツの方である。いや、私かもしれない。
さきほどの教室を出た時の殺伐とした空気が嘘のように、皆が思い思いのパンを抱えてほくほくしている。なんて平和な光景なんだ。

パン屋さん。金曜日の私たちの胃袋を支えてくれてありがとう。ささやかな楽しみをくれてありがとう。ここを卒業したら、遠野に訪れるたびに店舗に行って買うことにするよ。

家に帰ったら、コーヒーでも淹れてこのドーナツを食べよう。卒業制作はまだ全然終わってないけれど、根詰めちゃあいけないからね。あのときのドーナツを描いていた時に比べたら、イラレの技術もだいぶ上がったよね。

「・・・来週の月曜日、産直さんが来るのが最後なんじゃねえか?」

誰かが放った一言で、場の空気が一瞬にして凍り付いた。

産直の移動販売は月曜日・・・。総菜や弁当を求め、飢えた生徒たちが血まなこで玄関へ終結する恐ろしい日だ。産直さんはパン屋さんよりも滞在時間が短く、いちいち私たちを待ってはくれない。普段は良心的な価格のくせに「このお総菜は180万円だよ~笑」などと急にハイパーインフレを起こすこともある。「そんな金がどこにあんだよ~~~。」とその場で泣き崩れる者を何人も見てきた。

「・・・解散。」

それぞれが自分の教室へと戻っていく。パンを抱えた表情はみな共通ににこやかだったが、目だけは笑っていなかった。闘志に燃える戦士の目だ。

どうやら私たちの戦いはまだ終わっていないようだ。

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※この物語は実話をもとにしたフィクションです。すみません・・・。グラフィック科のみなさんに敵意など1mmたりともございません・・・。仲良くしてくださってありがとうございました。